「古着は、新しい自分や、世界の扉をひらくきっかけになる」

そう語るのは、古着ショップとして有名なSPINNSで働く、野村さん。

SPINNSは「ATTITUDE MAKES STYLE!(主張がスタイルをつくる!)」をコンセプトに、常に時代のトレンドに沿いながらも自分たちの ”主張” を大切にした「スタイル提案」をしつづけるスタイルマーケットとして挑戦をつづけているブランドです。

Qスポットとしても人気の彼らは、「SDGsの古着を試着して、変われるってムテキ体験」という体験プログラムを本店で展開されていますが、一体どのようなプログラムなのだろう?とお問い合わせをいただくことがあります。

そこで、このインタビューでは、プログラムで体験できる内容から、その背後にある思いについて伺ってみました。

ーSPINNSで体験できるプログラムの特徴とは?

SPINNS本店で実施しているプログラムには2種類あります。
まず、「古着を手にとりながら学ぶ、自分にもできるSDGs」プログラムは、お店の中をまわりながら、商品を手に取ってもらって、SPINNSが古着を通してどんな取り組みを行っているのかお話しさせてもらう内容となっています。SPINNSが取り組んでいるさまざまなプロジェクトや活動理念についてお話することが中心となります。


ーじっくりお話を聞くことがメインのプログラムですね。もうひとつのプラン「SDGsの古着を試着して、変われるってムテキ体験」はどういった内容なのでしょうか?

「SDGsの古着を試着して、変われるってムテキ体験(以下略:かわムテ体験)」は、お店にある古着を実際に試着してもらうプログラムとなっています。

普段は着ないようなタイプや、色の服をあえて着てみることで「意外と、似合うかも?」と思える服が見つかるかもしれない。お友だち同士で見せ合いながら「赤色似合うじゃん」「え、じゃあ今度から買ってみる」といった自分では気づけなかった新たな発見が生まれる面白さがあります。

最近はファストファッションの存在もあって、古着を着る子が減ってきましたが、その中には「古着って、オシャレ上級者がするものだよね」とハードルを高く感じている子も多いと思います。
でも、そんなに気負わずに、気軽にいろいろなアイテムを試す中で、「新しい自分」に出会える楽しみを感じてほしいし、もっと気軽に楽しんでもらいたい。そんな思いから、「古着に関心をもってもらうきっかけになれば」と、このプログラムを実施しているんです。

いろいろなご要望にお応えできるようにと2つのプログラムを用意していますが、やはり実際に行動してみる、ということに価値があると思っているので、個人的にはこちらのプログラムをおすすめしたい気持ちがあります。(笑)


ーお話を聞くだけでも充実感はありますが、実際に試してみることで体感覚で「面白い!」と感じられる瞬間に出会えることは、現場に行ったからこそできる学びでもありますよね。「かわムテ体験」を実際に体験するときの流れとはどのようなイメージでしょうか?

SPINNSのお店に行って、まずは簡単にお話をしながら、店内の商品を商品をざっと見てもらいます。古着屋だけど、古着だけじゃなくて新品もあることや日本のものだけじゃなくて海外のもあることを手にとってもらいながら感じてもらったあと、商品の中から好きなものを選んでもらいます。そして実際に試着してみて感想を共有する、というのが体験の大まかな流れです。

いろいろと試着してみて、友だちと自由にオススメしあったり、お互いのコーディネートを覗きあったりして、新しい自分を発見してもらえたらなと思ってます。


ーオススメしあうのがポイント?

自分が選ぶものって、普段自分が着ているものだと思うので、「変われる」を体験してもらうのにオススメし合うのはポイントですね。

あと、余談ですが、SPINNSの通信制サポート校であるSPINNS高等学院では『先生の服をコーディネートしよう』という授業をしたことがあります。店内の商品から自由に選んでコーディネートしてもらい、最後にコーディネートのポイントやテーマについて生徒さんにプレゼンしてもらったのですが、とても盛り上がっていました。

ーそれはすごく面白そうですね!SPINNSさんでは古着がもつ可能性をさまざまな形で体験できることをおこなっておられると思うのですが野村さん個人としては古着のどんなところが魅力だと思いますか?

もともと親の影響もあって、服自体は好きだったんです。親のオススメでデニムのセットアップを着ているような小学生でした(笑)。

子ども時代はファストファッションなんて無かったので、新しい服を買うためにすごくお金がかかりましたが、古着ならば千円や二千円で買える。自分がほしいものを見つけるために、いろいろなお店をまわって探していましたね。当時はスマホどころかインターネットも使えなかったので、本当に自力で一軒ずつめぐりながら探すしかなくて。「あのお店ならあるかも」といった友だちとの知識合戦も楽しかったなあ。

そんな、探して、探して、探して見つけるお宝さがしのような魅力が古着にはありますね。

そうやっていくつかのお店をめぐる中、ある古着屋のお兄さんと出会いました。そのお兄さんは、1着の服の中にも、音楽やマンガなどいろいろなカルチャーやストーリーが詰まっていることを教えてくれた存在で。「マンガアニメ好きなの?」「『AKIRA』好きならこんな服あるよ」と教えてくれたりして、自分の世界が服を起点にすごく広がったんです。

あと、最近は古着でイベント出店もしていて、千円で仕入れた商品を持っていって千円で売ったりしています。それだと利益が出ないのでは?と思われそうですが、儲けるためにやるんじゃなくて、古着を通して普段出会わないような人と繋がれるのが楽しいんです。古着イベントで色んな年代の友人もできました。

ー今後、古着を通して実現してみたいことはありますか?

古着を通して「次のアクションにつながること」をさまざまな形でつくりたいなと思っています。

たとえば、先日、滋賀県の小学校で探究学習として、古着のTシャツを使ったトートバッグをつくる授業を実施したんですが、みんなにはお家で着なくなったTシャツ、僕はお店の商品としては売れないTシャツ、それぞれ持ち寄って「糸も針も使わずつくってみよう」というプログラムで。このトートバッグは、15分くらいでつくれて本当に簡単なんです。

ミシンを使って、もっと見栄えのいいものを作ることもできるのですが、ただキレイなものを作るより、簡単な方が家でも再現しやすいし、次につながりやすいかなと思ってます。

トートバッグも授業でつくり方を知ったら、家に帰って「お母さん、いらないTシャツない?」「自分で作ってみたい」となったり、お母さんや家族も「こんな簡単に作れるんや!」と興味を持ってくれたりして、古着やその活用方法にも関心を持ってくれるきっかけになるのでは、という思いがあります。


ー「やってみたい!」という気持ちが、その後の行動にもつながる原動力となりますよね。最後に、Q都に来てくれた方に届けたいメッセージをお願いします。

自分のいらないものが、誰かにとっては大切なものになるかもしれない。
その想像力を片手に、不要になった服の行き先として「捨てる」以外の選択肢を考えてみたり、行動したくなる人が増えることを願っています。

誰かに譲ったり、フリマアプリに出品できたらいいんだけど、ファストファッションだとなかなかそれが難しいというのもあると思います。まちを見渡してみれば、実はいろいろなところに「不要な服の回収ボックス」があるけども、活用していない人も多い。最近では若い人の多くが「環境に良いことをした方がいい」というのが価値観のデフォルトになってきているように感じていますが、思春期ゆえに恥ずかしくて行動にまで起こせないとか、自分に直接関係のないことだから回収ボックスの存在にすら気づいていない、という方もいるかもしれない。


なので、Q都のプログラムに来てくれた生徒さんには、家に帰ってすぐやってみることのできるような、次につながるプチミッションを出してみたりするのですが、SPINNSに出会ったことで、不要な服を「捨てる」以外の行動をチャレンジしてみるきっかけになると嬉しいです。 


執筆:西田芙未(ウエダ本社utena worksより依頼 )
編集:Q都スタディトリップ事務局

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▼インタビューでご紹介したSPINNSの「Q」はこちら
「Q.24 なんで古着で若者や地域が元気になるの?」