Q都スタディトリップ(以下:Q都)ではさまざまなQスポットや体験プログラムをご紹介していますが、現地へ訪問する際のコミュニケーションにも使える「Qカード(仮名)」を、Q都では試作開発中です。

この記事では、「Qカード」を使ってどのようなことができるのか?のイメージをつかんでもらうべく、モニター企画として実際にワークショップで使っていただいた事例を元に、活用イメージをお伝えしていきます。


はじめに

今回、モニター企画にご協力いただいたのは、同志社中学校さん。

同志社中学校では探究学習が学習指導要領に組み込まれる以前から、探究的な活動である「自由研究」に力を入れて取り組んでいます。生徒が通常授業外で自由に参加できる探究プログラム「同中学びプロジェクト」の実施は、なんと年間300回以上も!
今回はQ都とのコラボ企画として、「社会をつくる『お買いもの』のチカラ」というテーマで。Qカードを使用しながら一緒に探究を深めていきました。

さらに、今回のワークショップを実施するにあたり、ともに企画・推進をしてくださったのは、Qスポットのシサム工房の村上さん。

「What you buy is what you vote(お買いものとはどんな社会に一票を投じるかということ。)」というスローガンをもとに、25年前に京都で創業したフェアトレードショップです。
また、Qスポットの中でも人気スポットで、Q都の参加を通じて全国8店舗で修学旅行生の受け入れも開始されています。

今回はシサム工房さんの協力のもと、日々のお買いものが社会をつくっていることや、これからの社会のために何を選ぶかについて考えるワークショップを開催しました。
同志社中学校の生徒さんの中で希望者12名が参加し、シサム工房さんからフェアトレード商品を選ぶことで貧困や児童労働、環境問題などの社会課題の解決につなげることができることを伺いながら問いを投げかけたり、考えを深めていきました。


社会をつくる「お買いもの」のチカラについて考えるワークショップ

まずはじめに教室に集まった生徒さんは、シサム工房さんが持参された商品の中から “ひとつ気になるもの” を選ぶお題が出されました。パッと手に取る方、じっくり手に取って悩まれる方などさまざまでしたが、なぜその商品を選んだのか、何が気になったのかを発表するチェックインからワークショップがスタートしました。

そのあとに、村上さんから「フェアトレードとは何なのか?」を考えるための基本的な背景のレクチャーを通じて、世界との比較から日本の現状を知り、日本ではなぜ普及が進んでいないのかなどを学びました。
さらに、なぜフェアトレードが大切なのか、そこに内在している課題や商品が作られる背景、商品を選ぶ消費者の姿などから、話は「お買いものが持つチカラ」へと進んでいきます。

シサム工房の創業者は人権や貧困問題に出会い、『同じ地球上に暮らす中でも社会的・経済的に立場の弱いとされる方々とより良い形でつながって生きていきたい』と強く願って始まったお店です。

何を選ぶかという消費行動が社会をつくっていることから、お買いもののチカラで思いやりに満ちた社会をつくる担い手を増やしていくという理念やビジョンが語られました。また社名にある「シサム」の由来がアイヌ語で「良き隣人」を意味することから、良き隣人の輪を深め広げていきみんなが幸せになれる社会をつくりたいと話すシサム工房さんに、話を聞く生徒の皆さんの様子は真剣そのもの。あらかじめ配布されていたA3サイズのメモ用のボードがあっという間に埋まっていきました。

Qカードを使って、シサム工房さんへインタビュー!

お話を伺った後は、生徒さんたちがそれぞれ印象に残ったことや疑問に思ったことをグループで話し合ったのちに、村上さんに質問をなげかけるインタビュータイムです。

企業の方に直接質問できる機会は普段なかなか無いこともあり、最初のうちはどのような質問をすればよいのか戸惑う生徒さんもいましたが、Qカードを手掛かりにしながら問いを考えてみることに。

Qカードには「その場所や人が持つ強みを活かしている?」「なぜその取り組みをするようになったの?」など、いろいろな角度から、企業や商品、事業などについての質問を考えるきっかけとなる問いが書かれています。

Qカードを頼りにしながら少しずつ質問が出てきはじめたことで、場の空気が変わり、生徒さんの緊張がほぐれていく中で、下記のようなやり取りが見られました。

⚫︎日本では海外と違って食品ではなくファッションがフェアトレードの普及のきっかけになっていることに気づき、「なぜ日本ではファッションなのか?」という独自の問いを投げかけていく姿が見られた。

⚫︎「目には見えなくても大事にしているものはありますか?」という問いには「海外の方と仕事を進めていく上で、異なる文化や風習に対するリスペクトと根気、違いに対して忍耐強く理解し合うことを大切にしています」と答えるシサム工房さん。商品づくりや事業の枠を超えた人と人とのコミュニケーションにおいて大切なことが語られる場面も。

⚫︎Qカードの問いから自発的に発展させた問いを考えた生徒さんからは「最終的にどのような社会になれば事業を達成できたと言えますか」といった質問も。
シサム工房さんからは「フェアトレードという言葉そのものがなくなることが、公平・公正な社会が実現できたことを表すのではないかと思います」といったやり取りがありました。そこでは講師と生徒という関係ではなく、企業(作り手)と消費者(選び手)という関係性の中で、また一人の人として、対等に話を深めていく時間が共に作られていることが感じられました。

ワークシートを使ってオリジナルCMやギフトカードづくり

交流タイムの後は、ワークシートを使ってオリジナルのCMやギフトカードを作る時間です。最初に自分自身が手に取った商品について、パッケージから情報を読み取ったり、タブレットでHPを検索したりしながら、ワークシートを埋めていきます。
経済的な基準の他に、社会的な基準、環境的な基準、どんな企業や団体と協働していくかなど、多方面からのアプローチが求められる少し難易度が高く感じられるワークシートでしたが、生徒さんたちは和気あいあいと話をしながら、フェアトレードをPRするCMづくりや大切な人にフェアトレード商品を贈る時のギフトカードづくりに楽しく取り組んでいました。


参加者全員で感想をシェアする交流タイム

ワークショップの最後は生徒さんだけでなく大人も含めた参加者全員で感想をシェアする交流会を行いました。
フェアトレード商品への理解が深まったこと、商品ごとに生産者や関わる人の想いが違っていることへの気づきからさらに興味がわいたこと、自分が手に取る商品の一つ一つは小さなことでも大切な一歩であることなど、それぞれの気づきを発表して今回の学びの場は幕を閉じました。

参加した生徒の声(一部抜粋)
・フェアトレードについて話を聞いてワークをしたことによって理解が深まった。
・企業の方から直接ホンモノの話が聞けてよかった
・質問がたくさん出たことで話しやすい雰囲気があってよかった。
・質問の内容を考えるのが難しいけど、Qカードがあったので考えやすかった。他のところでも使えそうな質問に出会えてよかった。

Qスポット(シサム工房)さんの声
皆さん積極的に参加してくれたので、会社やフェアトレードへの関心値は高められたように思います。
Qカードによって質問がたくさん出たので説明のしやすさがありました。
このままもう少し長く対話の時間を取れたらもっと面白い展開が期待できたかもしれないと感じています。

学校側の声
実際に商品に触れながらワークショップができたことがよかったです。いかに身近に感じられるきっかけを作るかが大事で、中学生でも学び、調べ、考えるという学習機会は提案できると考えています。Qカードによって明らかに生徒たちの質問量が増えていて、それによって新たな問いを発生させるきっかけになっていたと感じました。
一方で、あらかじめ問いがあることで、もしかしたら自由でクリエイティブな発想が難しくなってしまうという側面もあるかもしれないため、丁寧に関わり方を工夫することで有意義な学習が可能になると思います。


終わりに

京都で活躍する企業からその商品の背景や会社の想い、理想とする未来社会など様々な話を聞くだけでなく、ワークに取り組むことでより主体的に理解を深めようとする姿が見られた今回のワークショップ。
投げかける問いによってより有意義な学びの場が作られていく様子を見て、どちらか一方が進めるのではなく、その場にいる全ての人で場を作っていく大切さを感じました。どのような内容で、どのようにワークシートやQカードを使っていくのかによって、さらに有意義かつ面白いプログラムが生まれるのではないかとワクワクした思いを感じました。

執筆:今井佳恵(ウエダ本社utena worksより依頼)
編集:Q都スタディトリップ事務局
運営協力:一般社団法人e-donuts

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現在試作開発中である「Qカード」は、近日中に、Q都スタディトリップの「資料請求」よりダウンロード可能となります。どうぞお楽しみに!


*追記(2025年3月31日):
問いを発想するためのQ都オリジナルアイテム「ヒラメキQカード」が登場!
https://q-sdgs.kyoto.travel/qcard2503