京都市出身の西澤さんは、子どもの頃から人を笑わせることが好きで高校時代にはM-1甲子園にも出場。大学卒業後に勤めた大手旅行会社での経験を活かし、京都を訪れる旅行者に「記憶に残る時間を過ごしてもらいたい」と京町家の宿泊事業を立ち上げました。そして2022年、「『観光はおもろいもんだ』という未来を実現する」ビジョンを掲げ、新しい観光複合施設「SIGHTS KYOTO」をオープンし、“面白さ”を起点に“京都の持続可能な観光のあり方”を追求し続けています。
地域住民も旅行者も、自由に交差する新たな拠点
京都で生まれ育ち、人を楽しませることが好きだったことから、旅行や観光に携わることは天職でした。祖母の実家だった京町家を改装し、部屋のインテリアにも地元の工芸品や地域企業の製品をふんだんに使った、こだわりのある町家の宿泊施設を運営する中で「旅行者の方を喜ばせることはできていても、地域住民や暮らしとの接点がない」ことに違和感を感じるように。
祇園や清水寺など観光スポットが多いエリアでも、人口減少や空き家といった地域課題を抱えている京都市。「もしかすると観光地化することで、土地の需要が高まり住民が住みにくくなったり、混雑などで安心して暮らせなかったりすることにつながっているのでは」と、地域住民・暮らしとの接点づくりや、市民生活と観光の調和を目指す「持続可能な観光のあり方」を模索し始めました。
そこで新たに立ち上げたのが「SIGHTS KYOTO」です。築100年以上の元お茶屋さんを改装した建物の玄関を入るとすぐに、お客様同士が顔を合わせて会話ができるコの字型のカウンターをメインとしたバーがあり、歴史を感じる階段を上がった2階と3階には、それぞれ雰囲気の異なる部屋が続いています。実はそこは、好きな場所を選んで誰でも仕事ができる「コワーキングスペース」なのです。

コの字型のカウンターにしたのは、立場に関係なく心を通わせられる空間にしたかったから。バーに食事はなく主に飲み物の提供をおこない、営業も21時までにしたのは、周辺のお店を回ってもらいたいから。2階をコワーキングスペースにしたのも、観光客が多いエリアに施設を構えたのも、いろんな立場の人が自然に集まれるようにしたかったという意図を込めています。
一つ一つに理由と想いが詰まっている心地よい空間には、「いらっしゃいませ」ではなく、「お帰りなさい」「いってらっしゃい」というスタッフの元気な声が、いつも響いています。オープンして4年目を迎える現在、SIGHTS KYOTOは、京都で働く企業や行政の人、東京など他都市からの出張者、就活を控えた学生、そして海外からの旅行者など多様な地域からさまざまな人たちが集う交差点のような場所に。時には、常連客が自然に旅行者に京都案内を始めたり、地元の人に対して移住の相談が始まったり、東京と京都の企業がつながったり、想像していた以上の交流が生まれ続けています。


