日本を代表する伝統工芸「西陣織」が生まれた地に本拠を構える「西陣くらしの美術館 冨田屋」。両替商(りょうがえしょう)から始まり、織物や着物を扱う老舗(しにせ)の呉服問屋(ごふくどんや)として代々続いてきました。

建物は国・登録有形文化財の伝統的な京町家。西陣の商家ならではの特徴を残す職住共存型の町家には、そこに暮らす人々のライフスタイルに適した機能性と伝統文化、芸術性を兼ね備えた工夫があちらこちらに見られます。

能舞台にもなる、お座敷(冬と夏のしつらえ)

町家を通して再発見する、暮らしの知恵

京町家を守ることを通じて,今も息づく四季折々の日本の文化、心地よく暮らす生活の知恵を後の世代にも伝えていくことができます。暑い夏には涼しさを取り入れるため、衣服のように和室の建具(たてぐ)も衣替え。家の前の道に水をまく「打ち水」は、涼しさのためだけでなく住民同士のコミュニケーションを深める機会にも。

また、お正月だけ特別にこられる神様のための神棚は、毎年(縁起のいい方向)に向きが変えられます。このような年中行事や風習は、豊かな自然と、幸せを願う人々の想いが織り込まれた暮らしの文化として育まれ、今も京都に色濃く受け継がれています。知ると誰かに教えたくなる、日本のくらしの知恵がつまった京町家。現代にも生かせる知恵と工夫が、発見できるかも。