もともと1938年に創業し文具の卸(おろし)業だったウエダ本社は、企業や役所で使う事務機を扱うようになりました。倒産の危機をきっかけに10年かけて立て直し、現在では働く人の個性を活かすための「はたらく総合商社」として、職場環境のデザインや自由な働き方を提案しながら、地域とともに豊かになる新しい可能性をつくっています。

経営が苦しくなったのは、世の中の役に立っていないからではないかと気づき、世の中の役に立つ存在になるために、困りごとにビジネスとして向き合うことに決めたのが大きなターニングポイントでした。そのときに浮かんだのが、職場・オフィスというキーワード。以前から日本のオフィスが息苦しい雰囲気で、働く人の個性を活かせる場になっていないことに問題意識をもっていたので、日本のオフィスに対してどういうことができるのかを考え、行動を重ねた結果、人に着目し、個性や多様性を活かしながら多様な場と地域に展開する「はたらく総合商社」に生まれ変わりました。

人を活かしながら職場や地域に展開する、はたらく総合商社へ

最近では日本のオフィスも変わり始め、社会的にも「働き方改革」が求められるようになってきましたが、人を活かした本質的な働き方改革に取り組む企業を増やすためには、まず提案する自分たち自身がイキイキと働く会社環境にならなければいけません。そのために着目すべきなのは、「制度」ではなく「風土」です。単に働きやすい環境をつくるための制度を整えるだけで終わらずに、社員が“働きがい”を感じる環境をつくるための「風土(社員間で大事にしたい共通の考え方やルールなど)」が大切になります。

そこで、会社の中で“ウエダ本社らしい人格”を定めた「人格ベーシック10」をつくり、時間をかけて社内へ浸透させていく中で、どんどん社員が自主的に風土を良くするための活動を行うようになっていきました。女性活躍に取り組む子会社ができたのも、子どもを会社に連れてきて働く必要があった一人の社員を他の社員がみんなで支えて実現したことがきっかけでした。出産や育児など人生の多様なライフイベントと共に生きる女性たちが、場所や時間、これまでの当たり前に縛られずに、“自分にしかできない仕事”や心地よい生き方を選べる選択肢を増やしたい、と様々な取り組みと発信を続けています。

他にも、社員どうしで感謝の気持ちを伝え合う「ありがとうカード」や「いろどるチーム」「むすぶチーム」といったユニークな部署名、屋上での菜園など社員が自分たちで考えて、“働きがい”を楽しみながら実践。社外でも、社員一人ひとりが「問い」をもち、取引先というより“パートナー”として一緒につくりながら、面白いプロジェクトや事業が生まれています。2022年には、オフィスを飛び出して、京都の最北部にある町に地域の元料亭を改装した交流拠点「ATARIYA」をつくったのですが、社員がその町に移住したり、地元の企業との交流からこれまでにない企画が生まれたり。これからも個性や多様性が混じり合うことによる新しい可能性を、たくさんの職場や地域に広げていきます。