堤淺吉漆店は、明治42年に創業以来、漆にかかわるプロセスを一貫して自社で行う漆のメーカーです。漆の木から採ったそのままの樹液「生漆」を仕入れ、練ったり水分を飛ばして精製したり、生漆を精製して色の粉を混ぜた「塗漆」を精製したり、数種類の精製漆を調合・調色したりしています。

ここでみなさんに、ひとつ質問したいのですが、みなさんの生活の中で「漆」が使われている製品はありますか?これまで京都ではお椀(おわん)などの食器や神社仏閣(じんじゃぶっかく)の修復で漆が使われることが多かったのですが、この100年だけでも時代に合わせて漆の使用用途は減少しました。だから堤淺吉商店では、サーフボードやスケボー、自転車にも用途を広げています。

実は、漆は、国内で縄文時代から使用されていた世界最古の天然塗料で、古くから優れた抗菌作用があることで知られ、一度硬化すれば口に入れても安心な自然の塗料なんです。その素材としての可能性を、幅広い世代に広げていきたいと考えています。

漆が塗られたサーフボード

漆の可能性を広げることから守る、森と循環

漆には「接着剤」という機能を活かした「金継ぎ(きんつぎ)」という技法もあります。割れたり欠けたりしたお皿を漆で接着し、金や銀の粉で仕上げる日本ならではの修復技術です。ものを長く大切に使い続ける日本人の心をもう一度見直す、そんな機会を漆は与えてくれます。 堤淺吉漆店では全国の「漆」を京都からいろんな会社に届けながら、新たな可能性を追求をしています。

京都では先人たちが自然資源を取りすぎずに適切な量で営みを続けてきました。私たちも森の循環を取り戻すための活動や「漆」の木を植える取り組みも進めています。国産の「漆」を守ることは何を守ることにつながるのでしょう?漆から広がる森や陸の豊かさを探究してみてください。