観光客の著しい増加によって、観光地の地域住民の生活や自然環境、景観等に対して過度にマイナスの影響をもたらすオーバーツーリズム。一般社団法人ツーリストシップの代表・田中(旧姓:福田)千恵子さんは、大学3年生のとき新聞で目にした「観光公害」という言葉にショックを受け、地域の商店街約60店舗に聞き込みを開始。そこで知ったのは、外国人観光客に対する先入観や固定観念により、快く接客できないお店の実情でした。
学生生活を楽しんでいた京都に恩返しをしたい、という想いから何かできないか模索していた田中さんは、混雑解消などのハード面ではなく、”お互いを気遣う小さな気持ち”と”気づき”を大切にする心のあり方に着目し、「ツーリストシップ」という考え方を生み出します。
競技相手に対しても思いやりをもって接するスポーツマンシップのように、住む人、訪れる人、働く人、観光地に集うすべての人がお互いに思いやりをもって接することで「持続可能な観光」につなげる新しい価値観です。
その地域や地球も喜ぶ、観光の楽しみ方と生活者の視点
一般社団法人ツーリストシップが実施する修学旅行の事前ワークショップでは、例えば旅先でよく目にする注意書きや呼びかけの張り紙にどのような想いや背景があるのかを探ることで、旅行の前から地域への想像力を巡らせます。
社会状況により旅行することの意味にも変化が生まれている現在、「ツーリストシップ」は何も旅行前と旅行中に限ったものではありません。経済的に地域を潤すだけではない、旅行者のあり方を主体的に考え行動することは、同時に、旅行後に自分の地域を訪れる人たちに対する見方も変わり、そして一人の生活者として地域に関わる態度も育まれることにもつながるのです。
観光客が訪れるほど地域が疲弊するのではなく、元気になっていく。人・モノ・自然・文化などその地域に存在するすべての資源を大切にしながら地域や地球が喜ぶ観光を、関わるすべての人でつくっていくことの大切さを一緒に探究していきましょう。